雇用保険とは?
雇用保険とは、雇用保険法に基づく失業・雇用継続など、被保険者の生活を守るために存在する社会保険制度です。労働者の雇用主は加入対象となる労働者を必ず雇用保険に加入させなければいけません。
雇用保険の中でもよく知られているのは、何らかの事情で失業したときに給付される失業保険です。受給条件をクリアした被保険者には3カ月~1年弱の間失業給付(基本手当)が支給され、受給者は当面の生活費を得られます。他にも育児休業給付や介護休業給付、教育訓練給付などが雇用保険に該当します。
ただしこれらを受給するために、現住居を管轄するハローワークまで足を運んで手続きしなければいけません。ただ待っているだけで支給されることはないので注意しましょう。
失業給付受給資格を得るためには
失業給付を受給できる条件は大きく2つに分けられます。離職後に条件を満たしていないことに気づいても遅いので、必ず離職前に確認しておきましょう。
雇用保険に6カ月~1年以上加入する
退職日以前の2年間に合計1年以上、また、一部の人は退職以前の1年間に合計6カ月以上雇用保険に入っていれば給付条件をクリアできます。2年、または1年の間に途切れた期間があっても大丈夫です。
再就職への意欲を認めてもらうこと
失業保険は、再就職への前向きな気持ちがあるのに職に就けない人をサポートするためのものであり、再就職する気がない人や意欲がない人には、失業給付受給資格が与えられません。病気やけが、出産や育児、留学などの理由で、今すぐに働けないという人は支給対象外です。
再就職に対する意欲を証明するために、ハローワークで月に1度行われる失業認定日までに、月に2回(初回認定では1回)以上の求職活動を行いましょう。職業相談所や民間の転職エージェントが募集する求人への応募や、職に就くために必要な資格の受験などが求職活動に当てはまります。
失業給付をもらう条件について
ここでは離職の理由別に支給される条件や日数を紹介します。
自分側の都合による退職の場合
転職など離職希望者側の都合から、退職を願い出て離職することを「自己都合退職」と呼びます。自己都合退職でも「配偶者の転勤についていく」場合や、「けがや病気」、「家族の介護」などの理由がある場合は、「特定理由離職者」となります。
特定理由離職者の場合は「退職日以前の1年間に6カ月以上」、理由なしに退職した場合は「退職日以前の2年間に1年以上」の被保険者期間があることで支給されます。
失業保険では、申請日から1週間は「待期期間」とされており、その間手当は支給されません。また、理由なしに退職した人に対してはさらに3カ月間の給付制限がかかるため、退職の際には多少なりともお金に余裕を持っておく必要があります。
支給日数は雇用保険に加入していた期間によって90~150日の間で変わってきます。
雇用保険加入期間 | 10年未満 | 10年以上~20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
制限なし | 90日 | 120日 | 150日 |
会社側の都合による退職
被保険者の意思とは関係なしに離職しなければならなくなったという人も少なくありません。その理由が懲戒解雇以外での解雇や会社の倒産、リストラなどである場合です。この場合は会社都合退職と認められ、被保険者は「特定受給資格者」になれます。
この場合、「退職日以前の1年間に通算6カ月以上の被保険者期間」が認められれば、90日から最大330日の間で基本手当が支払われます。
雇用保年齢険加入期間 | 1年未満 | 1年以上~5年未満 | 5年以上~10年未満 | 10年以上~20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
年齢 | |||||
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳~35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳~45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳~60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳~65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
その他の退職理由
定年退職や更新する予定のない有期雇用者の契約終了は、自己都合になります。ただし3カ月の給付制限がかからないのは大きなメリットです。
基本手当日額は年齢と給与で決まる
基本手当の日額は年齢と退職日の6カ月間の給与で算出されます。退職した理由は関係ありません。日額は退職前の6カ月間の給与(ボーナスは除く)の総額を180で割って算出される「賃金日額」と「給付率」を掛け合わせることで決定します。
給付率は退職時の年齢と賃金日額によって45~80%の間で変わりますが、どの年代でも賃金日額が低い人の方が給付率は高くなる傾向です。「基本手当日額×支給日数」が基本手当の総額となります。
失業給付手続きの流れ
ここからは、失業給付を受け取るために必要な手続きを順番に説明します。
失業給付に必要な書類の準備
ハローワークに行く前にまずは必要な書類を準備しましょう。「雇用保険被保険者離職票(1)、(2)」は退職する会社から発行されることが多いので、退職日前後に確認を取ってください。ひとつでも欠けていると申請できません。
必要となるアイテム
- 雇用保険被保険者離職票(1)(2)
- 印鑑
- 写真2枚(縦3㎝×横2.5㎝)
- 普通預金通帳
- マイナンバー確認証明書
- 本人確認証明書
ハローワークでの手続きと説明会への参加
必要書類がそろったら現住居を管轄するハローワークに行き、求職申込みと必要書類の提出を行いましょう。窓口にいる担当者から後日行われる雇用保険受給者初回説明会の案内を受け、後日改めて参加することになります。
説明会では、他の参加者と一緒にVTRを見ながら受給までの流れを知り失業認定日を教えてもらいます。この説明会に出席しなければ、いつまでたっても手当をもらうことができません。この説明会はおおよそ1時間前後で終了します。またこの説明会も求職活動のひとつとして認められます。
認定日から失業給付が支給されるまで
失業認定日は説明会終了後からおおよそ1~3週間後に設定されることが多いです。失業認定日までに求職活動を必ず2回以上(初回は1回)行ってください。認定日には失業認定申告書を記入し、担当者に提出すると失業認定を受けられます。そして失業認定を受けた数日後に指定口座へ給付金が振り込まれることになります。ただし、何らかの理由なしに離職した自己都合退職者の場合は3カ月後から振り込みが始まります。
その後は原則4週間に1度、失業認定を受けながら手当てを受給してください。退職日の翌日から1年間を過ぎてしまうと受け取れないおそれがあるので、なるべく早めの手続きが必要です。
今回の要点
- 失業保険は雇用保険のひとつである
- 失業給付をもらうためには複数の条件を満たす必要がある
- 支給される金額は年齢と過去6カ月の収入、離職をした理由によって決まる
- 失業給付はハローワークに行ってしかるべき手続きを取る