基本、求人票に年齢制限が書かれない理由
転職サイトやハローワークなどにはさまざまな求人がありますが、どの求人もルールを守って公開されています。例えば、虚偽の内容は記載しない、男女の差別や年齢制限をしないというルールが用いられているのです。
年齢制限をしないというルールは、「年齢にかかわりなく就職に対して均等な機会を与えなければならない」、いわゆる、中高年の再就職を妨げることをしてはいけないという理由から2007年に厚生労働省が定める雇用対策法により加えられたものです。
そのため、基本的にはどの求人も年齢制限を記載せずに公開することが前提となっています。
「省令3号のイ」とは?
年齢制限を記載してはいけないというルールが制定されているにも関わらず、実際には年齢制限を記載している求人を見掛けたことはありませんか?
実は、そうした求人は「雇用対策法施行規則」により定められている例外事由に基づいて、年齢制限が認められているケースなのです。
例えば、求人の条件欄に「35歳未満(長期勤務によるキャリア形成をはかるため、例外事由3号のイ)」と記載されている場合があります。
この「省令3号のイ」とは、求人を公開するにあたり採用予定の人に対して雇用期間を定めないということを前提に、新卒者もしくはおおむね45歳未満の方を長期勤続によるキャリア形成を目的とする場合に限り年齢制限を設けることができるという特例のことです。
省令3号のイ」が制定された事情とは
では、なぜ年齢制限をしてはいけないというルールがありながら、「省令3号のイ」の存在があるのでしょうか。それは、「年齢制限をしない」というルールがありながらも、実際には採用側にも希望する人材のターゲット層があり、そこからかけ離れた条件の人の応募を防ぐために制定されたのです。
採用側が希望する求人が、時間をかけて行われる必要がある「人材育成」、「キャリア形成」、「技能・ノウハウの継承」などを目的とする場合、若手の採用が不可欠となります。このような背景から例外的に「省令3号のイ」が制定され、一定条件が守られる求人に限り、「35歳未満」という求人条件が認められているのです。
他にもある例外的年齢制限について
「省令3号のイ」の他にも例外的に年齢制限を設けているケースがあります。
○省令1号:定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めなく労働契約の対象として募集、採用する場合
例えば、定年年齢が60歳の企業の場合、60歳以上の人は採用していないという条件になります。近年はシニアの求人も多くなっていますが、省令1号の指定がある求人では応募年齢の上限があるので注意しましょう。
○省令2号:労働基準法等法令規定により年齢制限が設けられている場合
これは、労働基準法において特定の年齢層の就業が禁止、制限されている場合については年齢制限をすることが認められるということです。
○省令3号のロ:技能・ノウハウの継承の観点から特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集、採用する場合
この場合は、技能やノウハウの継承が必要な具体的な職種な名称が必要です。特定の年齢層は、30歳〜49歳のうち、5〜10歳幅の年齢層になります。また、相当程度少ない場合とは、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して労働者数が1/2以下の場合に認められます。
○省令3号のハ:芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合
芸術作品のモデル、演劇等の役者の募集や採用など、芸術表現に求められる特定のイメージが年齢によるものの際に認められます。
○省令3号のニ:60歳以上の高齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策の対象となる者に限定して募集、採用する場合
60歳以上の高年齢者に限定して募集、採用する場合には年齢制限をすることが認められます。
このように、求人のケースに応じてさまざまな年齢制限が設けられる例外もあります。
年齢に関するキーワードは正しく把握し応募しよう!
転職活動における求人検索では、法令に基づいた年齢に関する制限がある場合にはしっかりと記載されています。その意味を正しく理解して、自分はその求人条件に含まれるかを判断してから応募するように心掛けましょう。実際に「35歳以下」と記載されている求人でも、スキルやキャリアによっては、年齢制限を超えていても採用される場合もあります。
年齢制限を超えていても、アピールできる経験がある場合には、転職エージェントを上手く利用することで採用の可能性も格段にあがるはずです。
今回の要点
- 基本的に年齢制限を設けるのは禁止されているが、例外事由に該当する場合は法的に認められている。
- 「省令3号のイ」に基づけば、長期勤続によるキャリア形成を目的とし、「35歳未満」という条件提示が例外的に許されている。
- その他にも、年齢制限の例外事由が認められるケースが数種あるので、応募時には求人票の確認が必要
- 年齢制限を超えていても採用されるケースもあるため、年齢をカバーできる自分の強みをアピールし、あきらめずに応募してみよう
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